フィリピン訪問レポート(2017年10月)

今回は、日本在住のフィリピンご出身の西脇テレシータ様からのご報告を掲載します。
西脇様の娘さんが、フィリピンのインターンシップに行かれていたので、ご見学に行かれましたが、それ以外にたくさんの収穫があったようです。

2017年の10月20日(金)~21日(土)に、フィリピンのマニラにあるメトロ・ワールド・チャイルドのオフィスを訪問しました。20日(金)の朝7:30に集合でしたが、私が滞在していた母の家から、混んでなければ30分で行ける距離ですが、フィリピンはいつもひどい交通渋滞なので、5:30に家を出ました。実は、フィリピンの実家に滞在中は、毎日大変忙しくて、疲れ果てていて、行く気が失せていました。30パーセントは行きたくないという肉の思いがありましたが、70パーセントは、神様に行くように言われていると示されていましたので、重い腰を上げました。オフィスで、インターン生として奉仕している娘の泉と、前日の夜に日本から来ていた同じ教会のみちる姉妹にも会いました。

私は、寝不足とひどい頭痛で気分が悪い中、リーダーのハンナさんが朝のディボーションをスタッフの前でやってくれました。ヨハネによる福音書8章44節「あなたがたは、あなたがたの父である悪魔から出た者であって、あなたがたの父の欲望を成し遂げたいと願っているのです。悪魔は初めから人殺しであり、真理に立ってはいません。彼のうちには真理がないからです。彼が偽りを言うときは、自分にふさわしい話し方をしているのです。なぜなら彼は偽り者であり、また偽りの父であるからです」。そのメッセージは、私の心に響きました。私の気分を悪くさせていたのはサタンの策略だと実感しました。私は、このメッセージを一日中思い出しては、体と魂の弱さと戦い、力をいただきました。

その日は朝8時にオフィスを出発して、トンドに行きました。トンドは、スモーキーマウンテンと言われるゴミの山があるスラムです。そこに住んでいるエルマさんというボランティアスタッフの家でお祈りをしてから、二、三人のグループに分かれて、チラシ配りをしました。また、そこに住んでいる子供たちの家を訪問しました。

その時あるご夫婦に、「何のチラシか」と聞かれたので、道端教会学校の案内をしたところ、二人ともクリスチャンだということでした。ご主人が病気になって働けなくなり、奥さんが面倒を見ないといけない状況で、バイブルスタディのボランティアができなくなり残念なので祈ってほしいと言われました。一緒にお祈りをしましたが、私も神様のために役立つことができて嬉しくなり励まされました。2時間ぐらいチラシ配りと訪問をして、お昼はエルマさんが作ってくれた食事をいただき、午後はノースセメタリーというお墓に行きました。そこに住んでいる子供たちの、教会学校をするためです。これが私にとって初めて見る道端教会学校でした。

急に私にもあるご奉仕を頼まれました。それはタガログ語の歌を歌うことでした。しかし、フィリピンに来てからずっと喉の調子が悪くて声が出なかったことと、タガログ語の子どもの讃美も分からないため、悩みましたが、声が本当に出なかったので、そのご奉仕はお断りしました。すると、「じゃあ、この服を着て」と言われてドレスを渡されました。

この日のプログラムは、フィリピンのテレビで流行っている、一般の人たちが歌うカラオケコンテストをまねしたもので、子供たちは大盛り上がりでした。そこで私は、審査員役を任されたのです。男の子一人と女の子一人が前に出て、歌ってくれました。私は審査をしましたが、勝ち負けを言わず、どちらもほめてアドバイスをするように配慮しました。一時間のプログラムの中には、もちろん聖書のお話しもあり、この日は、サタンがエバをだます場面でした。
娘の泉がエバの役をやりました。泉は英語もタガログ語も上手になっていましたが、発音がまだ難しいようで、朝の車の中では、一緒にタガログ語の台詞の練習をしました。彼女が劇中で言う「Mamamatay kayo」という台詞の意味は、「あなたは死ぬでしょう」でしたが、娘は、「Mamamatay tayo」(人殺し)と言ってしまい、笑ってごまかしていました。

この日はプログラムの最後に、一人2枚ずつ食パンを配りました。子供たちはお腹を空かせているので、その場ですぐに食べてしまいました。

次の日は土曜日で、メトロは一番忙しい日で、1日に3回、道端教会学校をします。朝6:30に出発して、7:30に現場のセットをしてチラシ配りをし、8:30から1回目の教会学校がスタートします。内容は前の日と同じです。この日、終了後に子どもたちに配る食べ物は、ボランティアに調理をお願いしていたご飯と焼きそばでした。

この日の2回目と3回目の教会学校は、前日にチラシ配りをしたトンドで行いました。3回目の時に、ある女の子と会いました。ジョアンナという子で、ちょっと他の子と違って、すぐに私になついてきて、抱っこをせがみました。「のどが渇いた」と言って、水をもらおうとしたり、他の女の子とけんかして髪の毛を引っ張ったり、一人1枚だけもらうご飯のチケットを5枚も持って隠したりしていました。私はそれを見ても、ジョアンナがひどい子だとは思えず、なぜこの子がそんなことするかを知りたくなり、私の心がいきなり悲しくなりました。

その時、神様が私に、「あなたも10歳の子みたいに考えなさい」と語られました。そして、ジョアンナのために祈りたいと思い、手をジョアンナの頭に置いてお祈りをしました。お祈りが終わると、ジョアンナはどこかに行ってしまいましたが、すぐに戻って来て、隠していたチケットを返してくれたので、とても驚きました。その時私は言いました。「あなたは良い子だね。イエス様と私はあなたのことを愛しているよ」。それから、一緒に座ろうと誘いました。ずっと走り回っていたのに、彼女は、そばに座ってくれました。ずっと私の人差し指を握っていて、「ずっとそばにいて。どこも行かないで」と言いました。私は熱い思いがこみ上げ、涙があふれてきました。ジョアンナの素行は悪いのですが、彼女の目を見ると、天使のようでした。寂しい気持ちや愛されたいという願いが見えました。

私はもう一度、10歳の子どものように考えてみました。そして自分が子供の頃、貧しかったことを思い出しました。最初は、小学校に行くこともできませんでした。でも、経済的な援助をしてくれる人が現れて、学校に行くことができるようになりました。また、私には、ジョアンナと同じ10歳の娘、真由美がいます。もし、真由美がジョアンナのような生活をすることになったらと思うと…、考えるだけでも心が痛みました。

ジョアンナのことがとても気になったので、近所に住んでいるエルマさんに彼女のことを聞いてみました。すると、彼女の家庭環境はとても悪く、お父さんは刑務所で服役中で、お母さんはいるけれど、仕事もせずに何だか忙しくしていて、おばあちゃんがジョアンナたち二人の子供の面倒を見ているようでした。その状況では、とても生活費は足りません。私はそれを聞いて、ジョアンナのスポンサーになりたいと思いました。私は決して豊かなわけではありませんが、神様が望まれるなら、きっと支援できると信じます。持っている洋服や品物をフィリピンに送ることもできます。この経験で、私はいろいろな面で変えられ、もっとへりくだる必要を感じました。そして、再びトンドに行きたいという思いが与えられました。