スタッフが見るスラム アメリカ(2021年9月)

先月に続き、貧困地域であるスラムについてお話しします。今回は、アメリカとフィリピンについてです。


《アメリカ》
日本のスポンサーの皆様に、子どもたちの生活の様子をお伝えできることを感謝します。なるべくうまく説明したいのですが、少し長くなりそうです…。

実は、ニューヨークには「スラム」という名前の場所はありません。ですから、「スラムに住んでいます」と言う人はほとんどいません。ただ、「プロジェクトに住んでいます」と言う人はいるでしょう。

ニューヨーク・メトロの活動の中心は、「プロジェクト」という場所です。「プロジェクト」とは、主に1940年から1960年にかけて建設された低所得者用の高層住宅のことです。経済的に困窮している世帯がホームレスにならずに済むよう、手頃な家賃で住める場所を提供することがこの政策(プロジェクト)の目的でした。


プロジェクトという場所には、その一帯が高層住宅で占められています。この住宅はニューヨーク市住宅局が管理しており、入居希望者は当局への申請が必要です。住居の広さは世帯人数によって異なりますが、いずれにしても家賃は一般住宅より安く設定されています。

更に、状況によっては家賃の追加補助を申請することもできます。つまり家賃は住人の経済事情に合わせて設定されるため、「家賃は〇ドルです」と一概には言えません。収入が低ければ、家賃も低くなるわけです。

ひどいケースでは、家賃のほとんどが政府からの支援で賄われることもあります。これらのプロジェクトは、市内の様々な場所にあります。

プロジェクトの住宅には、小さなバスルームとリビングダイニングキッチン、そして寝室があります。小さな食器棚と流し台、冷蔵庫、コンロも備え付けられています。

他にも、民間が運営する低所得者用住宅が密集する地域もあり、そこでの間取りや備え付けの設備は、提供者によって異なります。

問題は、プロジェクトや民間の低所得者用住宅は一箇所に集中しているため、貧困に伴うあらゆる事が、狭いエリア内で集中して発生するということです。

アルコール中毒や薬物乱用、家庭崩壊、学校中退、暴力、ギャング、売春…。今や、これがプロジェクトの住人たちの生活に定着しています。

住人たちは、何世代にもわたって政府の支援に頼って生きてきました。家賃も、食料品も、学費も。中には、それらの支援を「当然の権利」と考えている人たちもいます。

そして、彼らは教育水準が低いので、低賃金の仕事にしか就くことができません。その結果、手っ取り早くお金を稼げる様々な犯罪行為に手を染めてしまうのです。

しかも、そのような犯罪の機会は、すぐ身近に転がっています。