ケニア視察ツアーのご感想①(2019年11月)

初めての開催となりましたメトロ・ケニアの現地視察ツアーにご参加くださった方々のご感想を、シリーズでお届けします。

近藤千絵様からのご感想

現地スタッフのピッタ兄の活躍
ケニアのメトロには、住み込みの本部スタッフが2名おり、ボランティアを合わせた25名の現地スタッフが、数万人(!)の子供を相手に日々教会学校の働きをすすめています。
このレポートでは、私達の滞在中に多くの奉仕をしてくださった一人の現地スタッフ、ピッタ兄の事を紹介したいと思います。

それは、食後にコーヒーを飲みながら隣に座っていたピッタ兄に何気ない質問を投げかけたのが始まりでした。
「ピッタ君、ご家族は?」彼は静かに話し始めました。
「僕には本当の両親も家族もいないんだ。小さい時からストリートチルドレンだったからね」

ピッタ兄、現在32歳。
くりっくりの目をした、まだ20代にしか見えない彼の今は、希望と才能に満ちていて、いつも笑顔で楽しそうな印象の青年。
とてもそんな暗い過去を持った青年には見えませんでした。
しかし彼のこれまでの人生は壮絶なものでした。
ただし、それはケニアでは決して珍しい人生ではなく、多くの子供達が今も直面している現実なのです。

 

(写真1)マイキー兄(左)とピッタ兄(右)2人ともストリートチルドレンだった

1998年、11歳のピッタ少年はナイロビにいる多くのストリートチルドレンの一人でした。
ギャングの仲間と万引きをしたり、悪事を重ねたりしていました。
ケニア政府はそのようなストリートチルドレンを一掃しようと、なんと次々と銃で殺害しはじめたのです。
どんどん仲間が殺されていき、まだ少年のピッタはなんとか逃れようと、トラックの後ろにしがみついたのでした。
着いたところはナイロビの北160キロの町、ナクル。
朝晩の冷え込みはつらいものがありました。お腹もペコペコの日々。
そんな中のなぐさめは、接着剤入りの袋を吸引して寒さや空腹を紛らわすことでした。
喧嘩や暴行でできた身体中の傷の痛みも、この方法でしか対処する事のできない悲しい現実が、今もストリートチルドレンの中にあるのです。

ある日、13歳のピッタ少年はナクルで開かれていた伝道集会のメッセージに耳を傾けていました。
「神様があなたの本当のお父さんです!神様があなたを養ってくれます!あなたを愛しています!」
彼はそれを聞いて、神様に触れられて涙が溢れてきたのでした。
「僕にもお父さんがいるんだ!!」
そして、集会の最後にメッセンジャーが「誰かこの少年の面倒を見てくれる人が会衆にいませんか?」と、ピッタ少年を紹介したのです。
すると、ある教会の牧師が里親になることを申し出て、ピッタ少年はキリストに出会ったのみならず、里親にも出会う事となったのです!
ピッタ少年はそれまで学校に通った事は一度もなかったのですが、小さな子供達に混ざって学校に通うことになったのです。
そして、どんどんと成長していくのでした。

(写真2)全力でメッセージするピッタ兄

学校を卒業して、同じ境遇で育ったマイキー兄(現メトロスタッフ)とスラムの子供達に福音を伝え始めました。
その後2人はメトロワールドで働く道が備えられ、ギャングだった彼らはすっかり生まれ変わり、今は子供達の支援に燃えています。
ピッタ兄の導くメトロのプログラムは本当に力強く、子供達への愛が溢れ、1000人の子供も彼の全身全霊のメッセージに釘づけになります。
神様はピッタ兄に音楽の賜物を豊かに与えてくださっています。
美しい声のアフリカのビートの賛美はYouTubeで絶賛公開中。
彼のビジョンは「音楽を通して多くの人を救いたい」というものです。
毎日メトロの仕事の後にボイストレーニングに通っています。
仲間とミュージックビデオも作りました。作詞作曲をします。
アーティストに楽曲も提供しています。
親に捨てられたストリートチルドレンだった少年は今、神様の子供として輝いていて、そして多くの人を輝きに導いています。
彼がこれからもますます用いられ、今日も1人でも多くの子供達に救いと励ましのメッセージが届けられますようにと祈ってやみません。
メトロキッズには、将来と希望があります! 頑張れピッタ兄!!

 

【こぼれ ば・な・し!】

その1
沢山の子供達の前で「コンドーでーす!」と自己紹介すると、みんなケラケラ笑い出します。
なぜかって?
「コンドー」は現地の言葉スワヒリ語で「ひつじ」を意味するのでした。
そして、道端にはあっちにもこっちにも「コンドー」がいて、道路をふさいでいることも。
全国の近藤さん、ケニアでのつかみはバッチリですよ。

(写真3)子供達のお手本であり、憧れでもある先生達。オシャレも大切ですって!

その2
ナクル(50万人程の地方都市)のお財布事情
※全て個人のヒアリングによるもので正確さには欠けます。
ケニアシリングは、換算がほぼ円と同じでわかりやすい(100シリング=100円)

【月収】
スラム 4,000円(野菜や物を路上販売、洗濯代行業など)
中流 15,000円(バイクのタクシーなど)
ちょっとお金持ち 30,000円(小学校の先生がこのあたり)
役人50,000円〜(仕事を得るには賄賂を使う必要あり)

【家賃】
スラム 1,000円(電気ガスなし、共同水道)
最近のアパート 10,000円〜

【教育費】
公立校は無料だが、制服や給食費がかかる。
大学も奨学金制度があり、優秀ならば大学もいける。

【食事】
ホテルでは1食500円〜(現地の人は外食をする余裕はない)
ケンタッキーの値段は日本と変わらない500円〜1,000円。
マクドナルドはなかった(質問したドライバーはマクドを知らなかった)。
スタバは首都のナイロビにはあるかもと言われたが、ネットで調べても見当たらなかった。
公立小学校の給食代は1食25円。(スラムではこれすら払えない家庭が多くある。)

(写真4)小学校のランチタイムは、みんなで分け合いながらの女子会

【車】
車の多くはトヨタの中古車(1番人気! )。
小型 60万円、中型 100万円、メトロで大活躍のバンは、なっなんと300万円!
中古車なのに輸送費や税金でかなりの高額になる。
ちなみに、ガソリンは113円/リットル。

※観光地のお土産店の商人は、ものすごい勢いでぼったくってくる!
思い切って値切らないと外国人はイイカモです。
10分の1から値切ってちょうどいい!

あとがき
失業率60%(日本3%)のケニア。
道端には、何もしていない男性がうろうろしている。
いろんな背景があるのだろうし、偉そうな事は私には言えない。
ただ、多くの小学校を訪れて先生方にお話を聞くと、貧困家庭の多くはシングルマザーの家庭とのこと。
父親が家庭や子供の責任を放棄して蒸発するのだそうだ。
小さな子供達を抱えて、苦労している母親達…

(写真5)ゴミ捨て場山に住むお母さん達

私は、今回のケニア訪問の中で子供達への教会学校の素晴らしいメトロの働きに感動した。
メトロの主にあるしつけと訓練と教育は、本当に素晴らしい!
希望と将来が見えてきた。あの子達が成長する頃には、ケニアも大きく変わっていると信じる。
そして何より、あの子供達の成長がどれほど母親達の喜びになっている事だろうか!
母親にとって、子どもの幸せが1番である事は万国共通。
私は、もっともっとあのお母さん達を励ましたい!
またあのゴミ捨場山に住むお母さん達に、本当に会いに行きたい。

(写真6)お土産のキャンディーとトウモロコシ粉を持つゴミ捨て場山の子供

※ゴミで山のようになった公共の廃棄場に、たくさんの貧しい人々が住んでいます