スタッフが見るスラム アメリカ ‐終‐(2022年1月)

プロジェクトに住む女の子。
写真の子どもは記事の内容とは関係ありません。

メトロの活動場所である「プロジェクト(低所得者用の公団)」の住人の中には、10代の娘に妊娠するようけしかける母親がいます。政府からの経済的支援を当て込んでのことです。

その結果、母親と娘とその子ども、という三世代からなる家族がプロジェクトの一室に住む例は珍しくありません。このようなケースの多くは、恋人を次々と変えながら、恋人を加えた共同生活をし、全員が生活保護に頼って暮らします。

プロジェクトの住民たちの生活について、タニーシャを例に挙げてご紹介します。タニーシャの家には寝室が3つあり、プロジェクトの住宅としては広い部類です。4人の子どもは成人しましたが、皆、タニーシャとの同居を続けています。

タニーシャの娘ジョイ(21歳)は、高校を中退しました。16歳で妊娠したからです。そして18歳の時に2人目を妊娠しました。今、ジョイと2人の子どもが1つ目の寝室を使っています。ジョイは無職で、日中2人の子どもを保育園に預けていますが、保育料も食事も政府からの支援で賄っています。

2人の子どもの父親はそれぞれ違い、どちらの父親も自分の子どもに関心がありません。今、ジョイには恋人がいます。しかし、彼は地元のギャングの一員で、週末になるとお酒を飲んだりマリファナを吸ったりして騒ぎ、ジョイも子どもたちを母親のタニーシャに預けて出掛けます。

そしてジョイは、お金が入れば新しい服や化粧品、子どもたちを着飾らせる衣類に使ってしまいます。彼女にとって、見た目がとても重要で、子どもたちの成長や健康に必要な食料品にはまったく無頓着です。

タニーシャのもうひとりの娘ダニエラ(24歳)は、高校は卒業しましたが、その後すぐ妊娠しました。息子は6歳のジェイミーと言います。

ダニエラも生活保護を受け、スーパーでパート勤務をしながら夜間大学で勉強しています。ジェイミーが4歳の時に幼稚園へ入園したのを機に勉強を再開したので、ダニエラもタニーシャに子どもの世話を頼むことが多いです。

今はジェイミーの父親とジェイミーの3人で、2つ目の寝室で暮らしています。ジェイミーの父親はプロジェクトで管理人の仕事をしており、自分たちが独立して生活するための住居を市の住宅局に申請中ですが、なかなか順番が巡ってきそうにありません。

タニーシャは、高校3年生の末っ子タニアと3つ目の寝室を共有しています。そして、息子のテクアンは26歳で、家にいる時はリビングで寝ますが、たいていは恋人の家で過ごしています。

恋人は1歳になるテクアンとの娘を育てていて、その恋人の家では祖母と姉、姉の3人の子どもたちが同居しています。テクアンは高校を卒業し大学にも入学したのですが、中退して地元ギャングの一員となりました。収入は多いのですが、麻薬や違法拳銃所持の罪で逮捕され、刑務所に入ったこともあります。

このように、タニーシャの家には大人が6~8人、3歳から6歳の子どもが3人住んでいます。一人一台ベッドを置く余裕はないので、子どもたちは床にマットレスを敷いて寝ています。

夕食はたいていタニーシャが作りますが、作らない日は、子どもたちはチップスやクッキー、ポップコーンなどを食べ、水や炭酸水を飲んでお腹を満たします。

このような子どもたちにとって、服役経験がある人が周りにいることや、安定した仕事に就けないことは当たり前の環境です。

同じ住宅内や近隣でギャングが活動していますから、薬物や銃器、ギャングの闘争なども身近なものとなっていくでしょう。それが彼らの見る世界なので、仕方がありません。おそらく、そのような環境が自分たちの生きる唯一の世界だと信じることになるのでしょう。

大学を卒業して、待遇の良い仕事に就いて、健全な恋愛や結婚をして、ギャングの闘争や薬物とは無縁の地域で自分が家賃を払って生活する…そのようなことは、彼らには理解できないことでしょう。彼らの環境が、私たちには理解できないのと同様に…。

だからこそ、私たちはここでキリストの福音を伝えています。聖書が語る善悪の基準や良い生き方を子どもたちに伝え、正しい道を歩む大人へ成長する必要があります。誰かが、子どもの行くべき正しい道を教えなくてはならないのです。

道端教会学校や、毎週の家庭訪問を通してメトロが子どもたちに関わり、ひとりでも多くの子どもたちがイエス様と共に歩む、自立したクリスチャンになることができることを祈っています。ぜひあなたも、共に祈ってください。キリストの愛を子どもたちに示すために―

アメリカ編 (終)


アメリカスタッフが見るスラム①

アメリカスタッフが見るスラム② -終-