スタッフが見るスラム ケニア(2021年8月)

先月に続き、貧困地域であるスラムについてお話しします。今回は、ケニアとフィリピンについてです。


《ケニア》
ある時、メトロのスポンサー支援を受けている女の子が、定期的に地元の養豚場に通っていることを知りました。豚の餌の野菜くずを運ぶ際に、地面に落ちてしまったものを拾い集めていたのです。それでも食料が足らず、家族が飢えてしまう前に養豚農家に、豚の餌を少し分けてもらえないか、頼もうと考えていました。

メトロが支援しているスラム街に住む子どもの多くは、家計の足しになるように、そしてわずかな食べ物を手に入れるために、薪拾いなど、何とかして小さな仕事を見つけています。

また、採石場の近くのスラムに住んでいる人は、子どもも老人も関係なく、採石場で1日中働きます。しかし、1日かかって石を小さく割って一輪車やバケツ一杯にしても、賃金はごくわずかです。

8人の子どもを育てている知り合いのおばあさんは、1日に1台の一輪車を石でいっぱいにして、手にするのは、わずか0.5ドル(50セント)です。それが、おばあさんと8人の子どもたちの1日分の食費のすべてなのです。

通常の4人家族だと、1ヶ月の食費に最低でも30ドルは必要です。このおばあさんの家庭で得られる金額は、どんなに一生懸命働いても一般的な家庭の食費の4分の1の程度です。

メトロが活動しているナクル近郊の人々は、極めて貧しく、小屋のようなスラム街の家を買う余裕さえありません。やむなく、採石場の近くにある洞窟に住んでいる人たちもいます。夜になると、ハイエナが洞窟の中に入ってこないように、ワイヤーと枯れ枝で枝洞窟の入り口を隠しています。


通常、スラム街の建物は、木や鉄板、泥といった単純な材料でできているものがほとんどです。そして、沢山の人が、小さな家に一緒に住んでいます。

水道やトイレ、電気や公共交通機関といった基本的な施設も乏しく、全くない所もあります。衛生状態は非常に悪く、伝染病などがすぐに蔓延しますし、犯罪率が高くて暴力事件やギャングも多いのです。

スラム街に住む人々には仕事がなく、ほとんどが貧しい家庭の出身者です。毎日愛する家族や自分自身が生き延びることに必死で、単純な仕事(洗濯、農作業、果物や野菜の販売など)を探して街を練り歩いています。家族のために食料や生活必需品を手に入れるため、日銭を稼ぎ、スラム街に住む家族の多くが、その日暮らしの生活をしています。

では、どうすればそのようなスラム街から出ていくことができるのでしょうか? それは非常に困難で、ほとんどの人は自力でスラム街を出ていくことなどできません。実際、スラム街の住人の多くが、代々スラム街に住んでいます。

ごく少数の親たちは、スラム以外の場所に非常に安い金額で家を借りることができるかもしれません。しかし、スラムから出て行くためだけに、家族との時間を犠牲にして働かなくてはならなくなります。

また、経済的に余裕のある親戚がいて、スラム街から出ていくための援助をしてもらえることもあるかもしれません。あるいは親切な人が、気にかけている家族をスラム街から連れ出してくれ、もっとましな家を探し、親たちに仕事を見つけてくれるかもしれません。でも、そのような人はほとんどいないのが現実です。